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仙台地方裁判所 昭和50年(ワ)1049号 判決 1982年5月31日

原告 甲山菊治 ほか四名

被告 宮城県知事 ほか一名

代理人 寶金敏明 遠藤健一 ほか六名

主文

一  被告宮城県知事が昭和五〇年一二月二日にした宗教法人満蔵寺規則の変更を認証する旨の処分は無効であることを確認する。

二  原告らの被告宗教法人満蔵寺に対する本件訴えを却下する。

三  訴訟費用中、原告らと被告宮城県知事との間に生じたものは同被告の負担とし、原告らと被告宗教法人満蔵寺との間に生じたものは原告らの負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨(被告両名に対し)

1  被告宮城県知事が被告宗教法人満蔵寺(以下「満蔵寺」という。)に対し昭和五〇年一二月二日なした宗教法人満蔵寺規則の変更を認証する旨の処分が無効であることを確認する。

2  訴訟費用は被告らの負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

(被告宮城県知事)

1 本案前

(一) 原告らの訴えをいずれも却下する。

(二) 訴訟費用は原告らの負担とする。

2 本案

(一) 原告らの請求をいずれも棄却する。

(二) 訴訟費用は原告らの負担とする。

(被告満蔵寺)

1 本案前

(一) 主文第二項と同旨

(二) 訴訟費用は原告らの負担とする。

2 本案

(一) 原告らの請求をいずれも棄却する。

(二) 訴訟費用は原告らの負担とする。

第二当事者の主張

一  請求原因(被告両名に対し)

1  被告満蔵寺は宗教法人法に基づく寺院であり、原告らは同寺の檀徒である。

2  本件認証の経緯

(一) 満蔵寺は、檀徒約一〇〇名を有し、亡本郷運廣(以下「運廣」という。)を住職兼代表役員とする寺院であり、従来「宗教法人満蔵寺規則」(以下「満蔵寺規則」という。)によつて、責任役員の定数は三名、うち一名は代表役員を充て、残り二名は住職が任命する旨定められていたため、同寺は運廣の自由な運営に委ねられていた。

(二) 運廣は、昭和四五年九月ころ、同人の子である本郷廣光(以下「廣光」という。)を、翌四六年四月に施行される仙台市議会議員選挙に当選させるために、同寺の檀徒である原告らに対して、選挙運動資金の捻出と選挙運動の応援を頼んだところ、原告ら檀徒から宗教団体を利用する選挙運動に反対され、廣光が同選挙において落選したため、原告らを恨み、同年四月ころ、原告佐藤重雄外一〇名を、満蔵寺檀徒から除名した。

(三) そのため原告ら約七〇名の檀徒は、運廣の理不尽なる行為に対し反省を求めるため「檀徒会」を結成して、檀徒の総意として、右除名を撤回するよう求めたが、同人はこれに応ぜず、却つて右檀徒会に所属しない檀徒約三〇名を糾合して「満蔵寺護持会」と称する団体を結成して原告ら檀徒会所属の者達を非難する行動を起こした。

(四) 原告らは、運廣の右の如き専横な寺支配を防止するため、同年七月満蔵寺の包括宗教法人真言宗豊山派(以下「宗派」という。)に対して、満蔵寺の責任役員定数を三名から五名(但し一名は代表役員を充てる)に増員し、内三名を檀徒会所属の檀徒から選出できる旨の満蔵寺規則改正の申入れをしたところ、同年八月ころ、宗派の仲介により、運廣と交渉した結果、原告ら申入れどおりの規則改正を行うことの合意が成立し、そのころ、満蔵寺規則中責任役員の定数を三名から五名に増員し(同規則六条)代表役員以外の責任役員は、法類その他のもののうちから代表役員が選定した者二人、総代が合議の上推薦した者二人を宗派の代表役員が任命する(同規則七条四項)、総代の定数を三名から五名に増員する(同規則一五条)旨の規則変更(同年一〇月二三日宮城県知事の認証を得た)を行つた(以下、右変更前の規則を「旧々規則」、変更後の規則を「旧規則」という。)。

(五) 同年一一月一四日、先に増員された責任役員二名を選任するため檀徒総会(檀徒全員で構成されている)を開催して、その前提として責任役員を推薦する総代五名の選任に入つた。

旧満蔵寺規則一五条二項によれば「総代は、この寺院の檀徒又は信徒で衆望があるもののうちから、代表役員が選任する」旨規定されているため、総代は檀徒総会で指名された者を運廣が選任することになつたが、総会の形勢からして五名の総代はすべて檀徒会所属の檀徒から指名されることを察知した運廣は、総代の選任及び責任役員の選任することなく、檀徒総会を強引に閉会した。

(六) そのため原告らは、運廣に対し檀徒総代五名及び責任役員二名を選任して満蔵寺の運営を正常に戻すよう申入れたが、同人は原告らの申入れに応ぜず、従来の専横な寺支配を改めようとしないため、昭和四七年八月三日宗派に対して、「本郷運廣が満蔵寺住職を辞任するよう勧告されたい」旨の調停申立及び運廣に対する懲戒の申立をしたところ、昭和四八年一〇月一五日宗派より原告ら檀徒会所属檀徒及び運廣に対し

(1) 檀徒総代の選出については、檀徒会側より三名、護持会側より二名を推薦し、これを住職が選任するものとする。

(2) 責任役員の選出については檀徒会側より二名、護持会側より一名、法類その他の者(真言宗豊山派の教師の資格を有する者を指す)のうちから住職が選定した者一名とし、住職は宗派代表役員に任命申請の手続を行うものとする。但し今回法類中本郷廣光は責任役員から外される。法類その他の者に適任者のない場合は本派教師について宗務所の推挙指名した者をもつて替えることができる。

旨の調停案が示され、前記当事者双方ともこれを受諾して調停が成立し、懲戒申立については、住職罷免のところ、昭和四八年は宗祖大師降誕一二〇〇年記念の年であつたため懲戒区分一級を減じて僧位降級に処せられた。

(七) 右調停通り責任役員を選任すれば「法類その他の者」に該当する者で運廣の意にかなう者は廣光以外になく、同人は責任役員から外されたため、もし責任役員の選任を行えば責任役員は運廣、護持会側より一名、宗派の指名する者一名、檀徒会側より二名の勢力分野となり、運廣の意に副う者は同人を含め二名だけとなり、責任役員中で少数派となり、従来の専横な支配を維持できなくなるため、その後も責任役員の選任をしなかつた。

(八) 昭和四六年八月一〇日旧々満蔵寺規則変更時の責任役員は、運廣、廣光、訴外佐藤惣太郎であり、代表役員以外の責任役員の任期は昭和四七年四月六日までであつたところ、その後、後任の責任役員の選任が行われないため同規則八条四項によつて、廣光、佐藤惣太郎はその後も責任役員の地位にあつたが、廣光は昭和四八年一二月三〇日退任し、佐藤惣太郎は昭和四九年四月七日死亡した。そのため同月八日以後は代表役員以外の責任役員は一名もいなくなつたため、運廣は、同年五月一日訴外渡辺忠太郎、同太田幸八、同高橋勝治を責任役員の代務者に選任した後、翌昭和五〇年六月頃代表役員及び責任役員代務者三名によつて、旧規則三条、七条、一一条、一四条、一六条、一九条、二七条、二八条、二九条を変更して満蔵寺と宗派との被包括関係を廃止して満蔵寺を単立寺とする旨の変更をし(以下「本件規則変更」という。)、同月一三日原告らにその旨公告した後、同年一〇月三一日被告宮城県知事に対し規則変更の認証申請をなし、同年一二月二日同被告は同規則(以下「新満蔵寺規則」という。)を認証する旨の決定をした。

3  本件規則変更決議の無効

しかし、前記の代務者及び代表役員のみで議決した旧満蔵寺規則の変更決議は無効である。すなわち、

(一) 旧満蔵寺規則一〇条は、責任役員の代務者を選任すべき場合として、「責任役員が死亡、辞任、任期満了その他の事由によつて欠けた場合に、すみやかにその後任者を選ぶことができないとき」及び「責任役員が病気、旅行その他の事由によつて三月以上その職務を行うことができないとき」の二つの場合のみを規定している。これらは、一時的な事由によつて、責任役員等を選任できない場合に限る趣旨であつて、本件の如く、責任役員をいつでも選任できる状態があるのに、正規の責任役員の選任手続を行えば、運廣の意に副わない者が選任されて、同人と檀徒会の勢力関係が一転して運廣らが少数派となり、従来の専横な寺の支配を維持できなくなることを恐れ、正規の手続を回避するために選任したような場合は、これに該当しない。

従つて、前記代務者の選任は無効であり、また本件旧規則の変更決議も無効である。

(二) 仮に前記三名の代務者選任の際には、旧満蔵寺規則一〇条の代務者選任の要件に該当する事由があつて、選任手続が有効であつたとしても、右選任の時点から本件規則変更の手続時点迄には、一年一ヶ月の期間があつたのであり、その間に正規の責任役員を選任することは十分可能であつたから、旧満蔵寺規則一三条の「代務者の置くべき事由がやんだとき」に該当し、本件規則変更の当時、右代務者らは、当然にその職を退いたことになる。よつて、かかる者らを含めて行つた規則変更の決議は無効である。

(三) 旧満蔵寺規則六条によれば、同寺の責任役員の定数は五名であるところ、本件旧規則変更当時の責任役員は、代務者を含めても四名であり(廣光は前記2(八)記載の如く、昭和四八年一二月三〇日宗派の解任により退任している。)、被包括関係廃止の如く宗教法人にとつて最も重大な決議をする際に、定数に満たない責任役員のみで議事を進めることは、それのみで決議の無効原因となる。なお、同規則八条四項の、責任役員等は任期満了後等も後任者の選任されるまで職務を継続する旨の規定は、廣光のように宗派により解任された場合には適用がないと解すべきである。

(四) 運廣は、自己の思いのままになる責任役員のみを選任しても、被包括関係にある寺の責任役員の任免権を有している宗派により任命を拒絶され、他の責任役員を任命され得るので、そのような事態を避けるため、宗派との被包括関係を廃止しようと考えたが、宗派の調停通りに正規の責任役員を選任すれば、被包括関係廃止に反対する檀徒会の者二名及び宗派の指名する者一名が選任され、規則変更が不可能となるため、脱法的に代務者を選任して規則変更の決議をしたものであるから、かかる行為は権利の濫用であり、宗教法人の全精神に抵触して無効である。

4  本件規則変更認証の無効

寺院規則の認証は、通常の行政処分たる「認可」に相当し、宗教法人の規則変更行為を補充してその法律上の効力を完成せしめる行為であるから、寺院の適法な規則作成を前提とする。従つて、規則が無効な場合には、前提要件を欠くものというべく、このような場合はその瑕疵は重大かつ客観的に明白であり、該認証は当然無効なものというべきである。

ところで、本件規則変更は、その変更についての責任役員会議の決議に前記のような瑕疵があり、無効なものであるから、被告宮城県知事の認証も無効である。よつて、その無効であることの確認を求める。

二  被告宮城県知事の本案前の主張

仮に原告らが満蔵寺の檀徒であるとしても、同寺の檀徒は違法な寺院の運営に関し、その是正を求めて出訴すべき法律上の権限を有しないばかりか、寺院規則の変更があつたことにより、自己の権利ないし法的利益が侵害され、あるいはその虞が生ずるわけでもないので、原告らは本件寺院規則の変更に対する認証の無効確認を求める訴について、原告適格を有しない。すなわち、

(一)  団体に対する行政処分につき提起する抗告訴訟の原告適格は、当該団体のみに与えられ、例外として、当該処分が団体の個々の構成員の個人的利益に変動をきたす場合にのみ当該構成員にも認められるものと解すべきである。なぜなら、団体に対する行政処分は、当該団体に対し、権利能力若しくは利益を附与し、これを剥奪若しくは制限し、又は負担を課する等直接その権義関係に変動をきたすことを目的とするが、これにより当該団体の構成員に直接権利変動の効果をきたすことは極めて稀であり、団体に対する処分によつてその構成員が蒙る影響は間接的なものとされているからである。従つて、檀信徒が寺院の構成員であるとしても、それだけでは寺院に対する行政処分の効力を争う抗告訴訟の原告適格を有するとはいえない。

(二)  本来宗教団体の実質は、団体と財団の中間的存在と考えられるが、宗教法人法は、宗教法人の法的構成をむしろ財団的なものとして規定しているように窺える(同法一条一項、二条、三条、一二条)。そして同法は、檀徒信徒の法的地位について明文の規定を置いていないばかりか、設立、財産処分、規則の変更、合併、任意解散の場合にあたり信者その他の利害関係人に対して一定の事項を公告すべきものとしている(同法一二条三項、二三条一項、六条二項、三四条一項、四四条一項)ところ、この公告の制度は、宗教法人の自主性の尊重と民主的運用を保障する精神から出たものではあるものの、檀徒・信徒において、右公告にかかる事項に対してどのようなことがなしうるかについての規定を置いていない場合が多く、該公告にかかる事項について意見を申し述べることができると規定している場合にも、その意見が申し述べられたときは、その意見を十分に考慮してさらに手続を進めるかどうかについて再検討しなければならないとしているに止る(同法四四条三項)点に鑑みると、檀徒・信徒は宗教法人の管理運営に関してなんらの権限を有しないし、これとの間に直接権利義務の関係は生じないとしているものと解される。

なお、旧法制において「氏子、崇敬者、檀徒、教徒又ハ信徒及其ノ総代ニ関スル事項」が宗教法人の規則の必要的記載事項であり、「氏子、崇敬者、檀徒、教徒及信徒ノ総代」がその必要的機関とされ、これら総代が規則の変更、重要財産の処分につき同意権を有していた(旧宗教法人令三条、六条、九条、一一条参照)時代にさえ、檀徒・信徒の地位について宗教団体の構成要素でないと解する説があつた。従つて檀徒・信徒やこれらの総代が規則の必要的記載事項でなくなり、檀信徒総代が必要機関でなくかつ規則の変更、重要財産処分等につきなんらの権限を有しなくなつた現行宗教法人法のもとでは、檀徒・信徒の法律上の地位につき、右のように解せざるを得ない。

(三)  ひるがえつて満蔵寺規則をみると、同規則は、現在まで数次にわたつて変更されているが、その中で「檀徒」「信徒」の文言が出てくる条項は、一五条のみである(同条は同寺設立以来変更されていない)ところ、同条は檀徒の地位について直接規定していない。またその主な内容は、二項の「総代は、この寺院の檀徒又は信徒で衆望があるもののうちから代表役員が選任する」、四項の「総代は、この法人の維持経営に関し、代表役員を助けるものとする」との規定にある。そうすると同寺規則上も同寺の檀徒・信徒は、その固有の地位において、同寺の管理経営権はないばかりか、寺院規則の変更により自己の法律上の利益に影響を受けるものではない。また、右規定から、原告ら檀徒が総代になりうる資格があり、その総代が責任役員を選任できる権限があるといえるにしても、そのことと本件認証との間には何の関係もないから、それらをもつて原告らの本件訴えにおける原告適格を支持する理由とはなし得ない。

(四)  もつとも、旧満蔵寺規則には、(包括団体の規則の効力)として二九条「宗派の規則及び規程中この法人に関係がある事項に関する規定は、この法人についても効力を有する」との規定があり、一方右二九条中の「宗派」である宗教法人「真言宗豊山派」の規程第七章「檀徒及び信徒」に、その資格、資格解除、権義等が規定されているので、満蔵寺が被包括関係を廃止するとすれば、檀徒としての権義関係に変更を及ぼすから、檀徒固有の地位において寺院規則の認証を争えると主張する余地もあるようにみえる。しかし、その権義も、布教又は儀式に参列し、その教化に浴することとか、葬式、追善その他の儀式を委託することとかいうものであり、これら檀徒・信徒に関する規定は、檀徒固有の地位において、満蔵寺の管理に参画することができるとするものでなく、また同寺から財産上の利益を受けることを内容とするものはない。しかも、その規定の性質は、もともともつぱら宗教法人法一条二項において行政主体の公権力行使を排除している宗教団体の宗教性にのみかかわる事項であつて、行政訴訟の対象となりえないものであることもまた明白である。

(五)  宗教法人法は、憲法二〇条に保障された信教の自由を確保するため、その二六条において宗教団体に被包括関係廃止の自由を認めているのであつて、宗教団体は、その自由な意思により、同条二項三項の手続を履めば被包括関係を廃止しうるのである。そして満蔵寺の場合、右手続の履践に欠けるところはない。もとより被包括関係の廃止によつて、原告らがその信仰の対象を冒され或は宗教上の礼拝、儀式を妨げられることはないことは明らかである。また被包括関係の廃止により原告らが宗教上なんらかの不便を蒙ることがあつたとしても、それは原告らの所属する宗教法人が被包括関係廃止自由の原則により当該関係を廃止した結果に過ぎず、かかる廃止を望まない檀信徒が、そのことを理由に、寺院規則の変更の認証を争うことができないことはいうまでもない。まして包括・被包括団体の関係は、本質的には宗教上の関係であつて、宗教団体の世俗上の活動に関する関係ではない(宗教法人法一条二項)から、被包括関係の廃止による不便をもつて原告適格の存在を理由づける事由とはなしえない。

三  請求原因に対する被告宮城県知事の認否

1  請求原因1中満蔵寺が宗教法人法に基づく寺院であることは認め、その余の事実は不知。

2(一)  同2(一)中満蔵寺が運廣を住職兼代表役員とする寺院であること及び従来満蔵寺規則によつて責任役員の定数は三名、内一名は代表役員をもつて充てられていた(ただし、昭和四六年一〇月二三日旧々満蔵寺規則が一部変更され旧満蔵寺規則となるまでである。)ことは認め、その余の事実は不知。

(一)  同2(二)及び(三)の各事実は不知。

(三)  同2(四)中被告宮城県知事が昭和四六年一〇月二三日、旧々満蔵寺規則中の責任役員及び総代の定数をそれぞれ三名から五名へ増員する旨の変更申請について認証を行つたことは認めるが、その余の事実は不知。

(四)  同2(五)及び(六)の各事実は不知。

(五)  同2(七)中責任役員が選任されなかつたことは認め、その余の事実は不知。

(六)  同2(八)中廣光が昭和四八年一二月に責任役員の地位を退任したことを除きその余の事実は認める。ただし規則認証変更申請の日は昭和五〇年八月二八日である。

3  同3及び4については争う。

四  本案についての被告宮城県知事の主張

1  本件認証決定の経緯

(一) 昭和五〇年八月二八日満蔵寺代表役員である運廣より、被告宮城県知事に対し、同寺院が宗教法人真言宗豊山派との被包括関係の廃止に係る規則変更承認申請書を提出してその申請がなされた。

右申請は、宗教法人法二七条所定の方式を具備し適式のものであつた。

(二) よつて被告宮城県知事は、同法二八条に基づき、同年一〇月三一日右申請者に対し、規則変更承認申請を受理した旨の通知をし、その後同法二八条一、二号の要件を具備しているか否か審査したところ、

(1) 二八条一号の要件について

同寺院の変更規則と変更前の規則を対照審査したところ、その変更しようとする事項が適法なものと認められ、

(2) 二八条二号の要件について

本件申請時の同寺院規則所定の規則変更等に関する規定は、

「第二七条 この規則を変更しようとするときは、宗派の代表役員の承認及び宮城県知事の認証を受けなければならない。この法人が合併しようとするときも、また同様である。」

というのであつたが、右申請は被包括関係の廃止に係るものであり、宮城県知事の認証は法定事項であるから、同法二六条一項の規定により、宗派の代表役員の承認を要せず、同寺院規則九条二項により責任役員会において同役員定数の過半数をもつて被包括関係の廃止及びこれらに伴う規則の変更を決定したうえ、同法二六条二項の公告、同条三項による通知の手続を経たことをもつて足りたのであるが、本申請書添付の責任役員会の議事録、被包括関係の公告証明書、包括団体たる宗教法人真言宗豊山派に対する被包括関係廃止についての通知書等により、同規則の変更が適法なものと認められ(なお法定の審査事項ではないが、同添付書類「総代の同意書」によれば檀徒総代の同意も認められる。)たので、同年一二月二日、同寺に対し規則変更を認証する旨の決定をし、同日その旨の通知を発した。

2  審査方法について

(一) 宗教法人法は、規則の認証又は規則変更の認証申請については、申請書のほか規則及び所定の事実証明書の提出を要求しているだけであり(一三条、二七条)、これを受けて所轄庁は、「これらの要件を備えていると認めるときはその規則を認証する旨の決定をし、これらの要件を備えていないと認めたとき又はその受理した規則及びその添付書類の記載によつてはこれらの要件を備えているかどうか確認することができないときは、その規則の認証をすることができない旨の決定をしなければならない」と規定している(一四条一項、二八条一項)。かように同法が規則の認証又は規則変更の認証申請にあたつて申請人に所定の事実証明書の提出を要求する一方、認証に関する決定に関し右のような文言を使用していること、一四条一項各号、二八条一項各号の事項は書面によつて十分な審査をすることが可能であるばかりでなく、かえつて実質審査をするに問題があること、同法八〇条の規定の内容等を考慮すると、同法は、認証に関する決定の審査方法については、所轄庁に対し、規則及び申請書添付の書面を調査したうえ、申請要件の具備を判断すべしとする形式審査(書面審査)主義を採用しており、申請要件の具備につき実質審査義務を課したものでないと解せられる。

(二) ところで、本件申請書の添付書類によれば、前記1記載のとおり、本件申請が法定の要件を具備していることが優に認められる。そして右条項の趣旨に照らすと、原告らの主張する違法事由は、寺院規則の認証またはその変更の認証の違法事由とならないこともまた明らかであるから、原告らの主張は、主張自体失当である。

なお、仮に本件規則の変更に原告ら主張の違法がありそのことが本件認証の違法を来たすものであるとしても、右形式審査主義のもとにおいては、右認証行為の瑕疵は無効事由とはなりえないというべきである。従つて、これが是正を求めるためには、原告らは宗教法人法八七条の不服申し立てをし裁決を経る必要があつたのである。

3  相被告満蔵寺の主張は被告宮城県知事においてこれを利益に援用する。

五  被告満蔵寺の本案前の主張

原告としては宮城県知事の認証行為という行政行為の効力を争えば足るのであるから、被告満蔵寺は被告適格を欠く。

六  請求原因に対する被告満蔵寺の認否

1  請求原因1の事実は認める。

2(一)  同2(一)中責任役員二名を住職が任命すること及び同寺が運廣の自由な運営に委ねられていたことは否認し、その余の事実は認める。

(二)  同2(二)中廣光が昭和四六年四月施行の仙台市議会議員選挙に立候補し、落選したこと及び運廣が太田市蔵に対し檀徒の資格を解除したことは認め、その余の事実は否認する。

(三)  同2(三)中原告ら檀徒が「檀徒会」を結成したこと及び右太田の檀徒資格解除の撤回を求めたことは認め、その余は否認する。なお、「満蔵寺護持会」が結成されたのは昭和四八年ころである。

(四)  同2(四)中責任役員五名のうち三名を檀徒会所属の檀徒から選出できる旨の規則改正の合意が成立したことは否認し、その余の事実は認める。

(五)  同2(五)中同年一一月一四日檀徒総会が開催されたこと、同総会が責任役員を推せんするためのものであること(「選任」ではない。)、その前提として、責任役員を推せんする総代五名の推せん(「選任」ではない。)に入つたこと、満蔵寺規則一五条二項に原告主張の定めがあることは認め、その余の事実は否認する。

(六)  同二の(六)中運廣が従来専横な寺支配をしていたこと、満蔵寺の運営を正常に戻そうとしなかつたことは否認し、その余の事実は認める。

(七)  同二(七)の事実は否認する。

(八)  同2(八)中廣光が昭和四八年一二月三〇日退任したこと、昭和四九年四月八日以後、代表役員以外の責任役員が一名も存在しなかつたことは否認し、その余の事実は認める。ただし、責任役員の「選任」がその後行われなかつたのではなく、「選定」が行われなかつたのである。また、代務者三名は運廣が選定し、宗派の代表役員が任命したことにより代務者となつたものである。

3(一)  同3の冒頭部分は争う。

(二)  同3(一)中責任役員の代務者を「選定」(選任ではない。)する場合として、満蔵寺規則一〇条に代務者を置く場合の要件が規定されていることは認めるが、その余の事実は否認する。

(三)  同3(二)については争う。

(四)  同3(三)中同寺の責任役員の定数が五名であることは認め、本件規則変更当時の責任役員が代務者を含めて四名であつたことは否認し、その余については争う。

(五)  同3(四)中満蔵寺規則一二条に原告主張の代務者の職務権限が定められていることは認め、その余については争う。

4  同4については争う。

七  本案についての被告満蔵寺の主張

1  運廣による満蔵寺の運営について

運廣は、明治一七年ころから住職のいない無住寺として荒廃していた満蔵寺に昭和一六年入山し、その復興に精力的に努力し、昭和二七年九月これを宗教法人とし、昭和四〇年一一月本堂及び庫裡を再建する一方、昭和三六年ころには「蔵王山蔵王寺」を別に開山するなど、その業績は目ざましいものがあり、数多くの檀徒の厚い信望を得ていた。また、同寺の檀家はいくつかの組に分けられ、各組から世話人が選ばれ、その世話人が世話人会を構成して、総代とともに寺の維持費等の負担方法などについて協議する仕組になつており、その外檀徒総会もしばしば開かれるなど、組織的にも、また実際の運営も、檀家の意思を寺の運営に反映させてきており、住職の専横な支配などはなかつた。

2  本件紛争の発端

(一) 運廣の子廣光は、昭和四五年七月ころ、翌年施行の仙台市議会議員選挙に立候補することを決意し、昭和四五年九月二〇日満蔵寺における被岸法要終了後、当時責任役員、総代であつた佐藤惣太郎が、同所に集つていた檀家数十名に対し、選挙に対する協力方を要請したところ、満場の賛同が得られ、直ちに地元における後援会の結成が呼びかけられ、佐藤惣太郎を会長とする後援会が同年一〇月ころ結成された。なお、佐藤惣太郎は昭和四六年二月ころ、同人の長男が廣光の対立候補の選挙運動に関与していることから会長を辞任した。

後援会の会員の主体は、前記蔵王寺の地蔵講々員であつたが、太田市蔵は、後援会の規則の中の「後援会の運営は会費及び寄付金を以つてあてる」との規則に目をつけ、満蔵寺檀家に対し、後援会に入会すれば会費をとられ金がかかる等とふれ歩くなどした。

廣光は、昭和四六年四月二六日施行の右選挙に落選したが、佐藤惣太郎、庄子伊三郎の各総代が翌二七日朝、満蔵寺を訪れ、「各候補は山田選挙事務所前を通るときは、何れも挨拶をして通るが、本郷(廣光)候補の選車は一言の挨拶もなく通つた。本郷候補は選車で渡辺芳雄候補と口論をしたとの話を山田事務所で語つていた。」と話したので、廣光は事実無根であることを述べるとともに、「私は今後何十年かかつても封建的な意識を一掃し、新しい明るい部落づくりに努力するつもりである。」との抱負を語つた。

(二) ところが佐藤惣太郎は右の言葉を誤解し、かつ悪意にとり、太田市蔵に対し「住職は、今後の選挙に応援しない檀徒は出てゆけといつて、その檀徒の名前を十数名挙げた。何十年かかつても敵をとるとの暴言を吐いた。」と虚偽の事実を述べた。

この報告を契機に、太田市蔵は、同年五月三日、仙台市飯田部落内の八幡神社において、「緊急檀家有志の会」を開き、檀徒数十名を集め、太田市蔵が副座長兼司会となつて、佐藤惣太郎に前記のとおりの事実に基づかない報告をさせ、直ちに「檀徒会」を結成し、甲山が委員長となつた。同人らは、「寺の管理は檀家で行うようにしたい。寺の寄附は出さないようにする。御布施は高いので檀家で定め、最低にする。」などと発言し、檀家の署名を今後集めると決議した。

甲山は、同月五日、「寺の管理運営に対し、住職の一方的言動に委ねず、檀家の意思を充分反映すべく檀徒会を結成する」旨の文書を印刷し、太田市蔵、渡辺忠五郎らは、「住職が余りにもワンマンである。今後葬式法要等の御布施を安くしたい」、「太田市蔵が檀家から抜かれそうだから、抜かれないため署名を集めたい」、「住職が暴言を吐いた」等と言つて檀家の署名集めを行つた。そのため、檀徒の中には全く真相も解らぬまま署名したり、親戚縁故らの理由から止むなく署名に応じる者が出て来た。

(三) 右のような経過から、運廣は、このまま放置すれば紛争が拡大し、満蔵寺の維持運営に支障を来すと考え、同月二二日、太田市蔵の檀徒資格解除に関する責任役員会議を開催し、寺院所有の財産を管理するのは寺院の代表役員たる住職に属する権利であるにも抱らず、管理運営等に干渉、または妨害するような決議をすることは、檀徒としての資格を有しないとの理由により、檀徒資格解除の決議をし、同月二三日、総代の同意を得て、同月二四日、太田市蔵に対し、解除の通知を出した。

3  規則改正により増員された責任役員が選定されなかつた理由及び代務者選任の理由

(一) 昭和四六年一一月一四日、満蔵寺本堂において、寺院規則の変更により増員された責任役員二名を推せんするため、檀徒総会が、宗派東北宗務支所より訴外熊谷安祐及び佐藤智禅の出席を得て開催された。

そして議事に入つたところ、甲山より「従来の役員は全員辞職させ、檀徒会で選んだ人々を住職は異議なく承認してもらいたい」との発言がなされた。そこで、代表役員である運廣は「檀徒間の対立を解消するためにも、現役員は全員辞任し、あらためて檀徒各班ごとに世話人を選出し、その世話人が総代を選考し、代表役員がこれを総代に選任する。そして、総代は合議により責任役員を推薦するという方法が望ましいと考える」と述べて、このようなやり方に対する協力方を要請したのであるが、これに対し、甲山ら檀徒会の幹部は、「檀徒会で選んだ役員を住職が拒否する権限はないから承認すべきである」として譲らず、檀徒会で選んだ役員をそのまま承認するよう強硬に要求し、熊谷支所長に「檀徒会で選定した役員の氏名を一応発表し、住職に検討してもらつてはどうか」といわれても、「こちらが決めた役員を全面的に承認するか、素直に承認しなければ発表する必要はない。」と応じなかつたが、熊谷支所長に再三促された結果、世話人として原告佐藤重雄外六名の、総代として原告佐藤重雄外四名の、責任役員として甲山、原告山田幸雄、同菊地三男の各氏名を発表した。しかし、発表された氏名を見ると、いずれも檀徒会の幹部であり、紛争の直接の当事者ばかりであるので、代表役員運廣としては、これをこのまま承認したのでは、今後も同様な紛争が絶えず生じ到底円満な寺院の運営はできないと考え、強硬にその承認を求める檀徒会の態度には対応し切れないので、檀徒総会の閉会を宣言した。

(二) その後も、原告らから運廣に対し、役員の選出方につき申入れがあつたが、役員の選出に関する原告らの従来の強硬な態度が全くあらためられていないので、運廣はこれに応じられなかつた。

(三) 運廣は、昭和四八年、原告らとともに、原告の主張する通りの宗派の調停を受諾したが、右調停の趣旨は、代表役員以外の責任役員の選出について、檀徒会側より二名、護持会側より一名という割合を定めたに過ぎず、選任手続は、満蔵寺規則に従い、檀徒会、護持会がそれぞれ推せんした者より代表役員が選定し、宗派が任命することになるというものであつた。また、宗派による調停は、満蔵寺規則に抵触する部分は効力を有しないから、同寺規則により定められた住職の選定権を奪うことはできない。

(四) 運廣は、昭和四九年二月一二日、宗派による調停条項を実施し、寺院運営の正常化をはかるため、檀徒総代及び甲山らに対し話合いを申し入れ、同月二〇日、満蔵寺本堂において、檀徒総代三名及び檀徒会代表三名が出席して話合いが行われたが、具体的な結論は出なかつた。ところが翌二一日甲山は話合いの成果だとして、原告菊地三男、同甲山、同佐藤重雄、同山田幸雄、訴外庄子惣兵衛の五名を役員(責任役員及び総代)の候補者として提示してきた。しかし、右調停の趣旨は、代表役員以外の責任役員を選出するにあたつては、人数を檀徒会側より二名、護持会側より一名とするという人数割合を定めたにすぎず、満蔵寺規則に基づく住職の責任役員の選定権及び総代の選任権までを奪う趣旨ではなく、また、宗派の調停にはそのような効力もないと解せられるところ、提示された五名は、いずれも檀徒会の幹部であり、役員としての適格性を欠くと考えられたうえ、昭和四八年四月八日、廣光及び訴外渡辺忠太郎が当時の宗派総務部長浅井堅教と会見した際、同部長より「檀徒会の幹部は、これまでの紛争の当事者であるので、役員には就任できないものと解釈してくれ。」と話され、その後、同年一〇月二五日、運廣が同部長に対し、役員の選任につき電話で照会したときにも「紛争当事者の幹部は外すのが常識である」旨の回答を受けるなど、宗派の意向も運廣の見解と同様であつたため、運廣は昭和四九年三月四日、承認できない旨通知した。

(五) 原告らは、その後も甲山が昭和四九年三月九日付の書面で運廣に対し、改めて檀徒会側の責任役員を選出する意思のないこと及び運廣こそ代表責任役員としての適格性を欠くので住職代務者を選任されたい旨申し入れるなど、右のような態度を改めなかつたため、役員の選出のできないまま、同年四月七日、責任役員であつた佐藤惣太郎が死亡し、責任役員の欠員が三名となつた。しかし、右のような状態のため、後任者の選出ができないので、運廣は、旧満蔵寺規則一〇条一号の代務者を置くことが義務づけられている場合たる「代表役員又は責任役員が……その他の事由によつて欠けた場合において、すみやかに後任者を選ぶことができないとき」に該ると判断し、訴外渡辺忠太郎、同高橋勝治、同太田幸八を責任役員代務者に選任し、同年五月一日宗派代表役員が右三名を任命したのである。

その後も右状態は改善されないため、役員不選出のまま今日に至つている。

4  代務者の退任の有無について

宗教法人満蔵寺規則一三条に代務者が退職すべき場合として規定されている「代務者を置くべき事由がやんだとき」とは、たんに後任者の選任が可能になつたというだけでは足りず、後任の責任役員が選任されたというような明確な場合を指すものと解すべきである。けだし、後任者の選任の可能性をもつて右事由に該ると解するときは、代務者がいつ退任し、その職務権限がいつまであつたのかが不明確で徒らに法律関係に混乱を招くからである。よつて、本件規則変更決議当時にも代務者三名は存在していたものである。

5  廣光の退任について

宗派による調停第二項には「今回法類中本郷廣光は責任役員から外される。」とあるが、この意味は、調停に従い新たに責任役員を選任する場合には、廣光を選任することはできないという意味で、調停の受諾と同時に自動的に退任するという意味ではない。なお、旧満蔵寺八条四項は、「代表役員及び責任役員は、辞任又は任期満了後でも後任者が就任する時まで、なお在任する。」とあり、前任者は後任者の就任したとき退任すると解される。

6  代務者の権限について

代務者の権限を規定した満蔵寺規則一二条は、代務者の職務権限について何らの制限を加えておらず、外にそのような規定もないから、代務者により被包括関係廃止を内容とする寺院規則の変更決議をすることに違法はない。

7  権利濫用の主張について

宗教法人法一条二項、二六条、二八条、八五条の法意及びその立法の根本趣旨に照らし、被包括関係を廃止して単立寺になることは、宗教法人の宗教本来の領域にわたる事項であつて、被包括関係廃止の規則変更の理由がどのようなものであれ、その手続が適法に行われていれば、法の干渉しないところであり、裁判所の審査権の及ばないところであるから、「権利の濫用」という概念は、本件の場合入り込む余地がなく、原告の主張は失当である。

八  被告宮城県知事の本案前の主張に対する原告らの反論

1  寺院の檀信徒は、特別の場合を除いては寺院の基本財産、僧侶とともに寺院の構成分子であるから、その地位において寺院(宗教法人)の規則変更に関する訴訟について原告適格を有する。

2  檀信徒は満蔵寺においては、満蔵寺規則一五条二項により、代表役員により総代に選任され得る資格を有しており、さらに総代は同規則七条四項により、合議によつて責任役員を選任できる権限があるから、究極的には寺院の運営に参加できる法的地位にあるといわなければならない。このような地位にある檀信徒は、宗教法人の規則変更に関する訴訟についての原告適格が認められる。

3  原告らは、檀徒として、真言宗豊山派に属する満蔵寺を信仰の対象としてきたのであり、満蔵寺が同派との被包括関係を廃止して単位寺となつた場合は、その信仰対象が全く別個のものとなるのであるから、このような場合には、檀徒に原告適格を認めるべきである。

九  被告満蔵寺の本案前の主張に対する原告らの反論

被告満蔵寺は宮城県知事の認証行為を有効と主張し、原告らは無効と主張しているので、その間に「法律上の地位の不安定」が存在し、これを除去するには確認判決を得ることが有効適切であるから、本件訴訟は被告満蔵寺の関係では確認の利益を有する。ところで、確認訴訟における被告適格は、確認の利益の有無によつて決まるから、被告満蔵寺は本件訴訟における被告適格を有する。

一〇  被告満蔵寺の本案の主張に対する原告らの認否及び反論

1  被告満蔵寺の本案の主張1、2は争う。

2  同3(一)中檀徒会側が菊地三男外四名を役員候補者として提示したことは認め、その余は争う。

3  同4は争う。「代務者を置くべき事由がやんだとき」とは一般条項的な規定であるから、諸々の事情を総合的に判断して決めればよい。

4  同5は争う。満蔵寺規則八条四項が適用になるのは、辞任、任期満了等により退任する場合であり、宗派により解任されたような場合を含まない。さらに、本件において仮に代務者選任の要件があるとすれば、廣光は後任の代務者の選任により退任している。

第三証拠 <略>

理由

一  被告宮城県知事の本案前の主張について

1  被告宮城県知事が、昭和四六年一〇月二三日及び昭和五〇年一二月二日の二回にわたつて、満蔵寺規則の変更に対する認証を行つたことは原告らと被告宮城県知事との間に争いがない。

<証拠略>によれば、次のような事実を認めることができ、この認定に反する証拠はない。すなわち、

原告らは、昭和四六年以前から現在に至るまで満蔵寺の檀徒である(ただし、原告太田市蔵については檀徒資格除名処分を受けたが間もなく右処分が撤回されたということがある。)。旧々満蔵寺規則(昭和四六年一〇月二三日認証にかかる規則変更前の満蔵寺規則)から旧満蔵寺規則(右変更規則による満蔵寺規則)を経て新満蔵寺規則(昭和五〇年一二月二日認証にかかる変更規則による満蔵寺規則)に至るまで、満蔵寺の檀徒は、規則上、代表役員により総代に選出され得る資格を有し(一五条二項。なお、右のような規定が存することは原告らと被告宮城県知事との間に争いがない。)、また総代は代表役員以外の責任役員を代表役員に推せんする権限を有する(七条四項)ものと定められ、檀徒が責任役員の選定に関与できる制度となつている。旧々満蔵寺規則及び旧満蔵寺規則によれば、同規則に定められていない事項については宗派(宗教法人真言宗豊山派)規則によることとされており(二九条)、これに従つて、満蔵寺の檀徒は、宗派規則の適用を受けて、宗派及び満蔵寺に対し、布教または儀式に参列し、その教化に浴すること、総代となること、葬式、追善その他の儀式を委託することができ、また、外護に任じ永続維持を扶け維持費や営繕費を負担する義務があるとされる(宗派規則一七六条)。満蔵寺の檀徒らは、実際上も、同寺に対し、月牌、負担金等の名目で金銭、米等を定期的に納め、他方、満蔵寺の住職に儀式、典礼等の執行を依頼していた。檀徒は、その所属する家(檀家)を一の単位として、七戸から一〇戸が一班として編成され、班より世話人が選出され、世話人は総代といつしよに世話人総代会を構成して、各檀徒が負担すべき月牌の金額の決定等を行つてきた。檀徒全員により構成される檀徒総会が度々開かれ、本堂の建立等の寺にとつて重要な事項について協議が行われてきた。

右認定の事実を総合すれば、原告ら満蔵寺の檀徒は同寺における人的な構成要素となつているものと認められる。

2  本件規則変更(旧満蔵寺規則から新満蔵寺規則への変更)が、満蔵寺と宗派との被包括関係を廃止して満蔵寺を単立寺とするための関係諸規定の変更を内容とするものであることは、原告らと被告宮城県知事との間に争いがない。そして、<証拠略>によれば、原告ら檀徒は、右規則変更により、旧満蔵寺規則に定めのない事項について適用されていた宗派規則の適用される余地がなくなることの結果、檀徒の地位やその受くべき利益等に関する諸規定(宗派規則一七四条、一七六条、一八二条ないし一八五条など)の適用を受けられないこととなるばかりでなく、事実上も、宗派によつて従来保障されてきた檀徒の法的地位やその受くべき利益等に関する直接または間接の救済の機会を失うこととなることが認められる。

3  以上1、2の事実によれば、被包括関係の廃止を内容とする本件規則変更は、被包括宗教法人満蔵寺の人的構成要素たる原告ら檀徒の法的地位ないし利益に重要な影響を及ぼすものであつて、右規則変更による影響の及ぶ範囲が原告らの宗教上の地位ないし利益の限度に止まるものとは解することができないから、原告ら檀徒は、本件規則変更について、その認証の効力を争う原告適格を有するものと解するのが相当である。

よつて、被告宮城県知事の本案前の主張は採用することができない。

二  被告満蔵寺の本案前の主張について

原告らの被告満蔵寺に対する本件訴えは、相被告である宮城県知事がした行政処分たる認証の無効であることの確認を求めるものであるが、このような訴えは、行政事件訴訟法三八条一項、一一条により、処分をした行政庁を被告として提起しなければならないものであつて、処分行政庁以外の者は、被告適格を有しないというべきであるから、被告満蔵寺に対する本件訴えは、被告適格を欠く者に対して提起された訴えであり、不適法である。

三  被告宮城県知事に対する請求原因について

1  被告宮城県知事が満蔵寺より満蔵寺規則中、三条、四条、七条、一一条、一四条、一六条、一九条、二七条、二八条、二九条を変更して同寺と宗派との間の被包括関係を廃止する旨の規則変更の申請を受け、昭和五〇年一二月二日、その認証を行つたことは原告と被告宮城県知事との間に争いがない。また、<証拠略>によれば、昭和五〇年八月二八日、満蔵寺の代表役員である運廣より、被告宮城県知事に対し、前記規則変更の認証を申請する旨の規則変更承認申請書が提出され、被告宮城県知事は、右申請を受理し、同年一〇月三一日、満蔵寺に対し、その旨通知したこと、右申請書には、自由な布教活動、経済的負担の軽減などを理由として、代表役員一名、責任役員一名、責任役員代務者三名の全員一致で規則変更を決議したこと等を内容とする満蔵寺責任役員会議事録(写し)、総代五名による右規則変更についての同意を示す総代の同意書(写し)、宗派との被包括関係の廃止を宗教法人法二六条二項に基づいて公告したことを証する公告証明書、宗派に対する被包括関係廃止についての通知(写し)等が添付されていたこと、旧満蔵寺規則九条二項は同寺の事務は責任役員の定数の過半数で決する旨、六条は責任役員を五人とする旨、一二条は代務者は責任役員に代つてその職務権限の全部を行う旨、二七条は規則変更の際には宗派の代表役員の承認及び宮城県知事の認証を受けなければならない旨、それぞれ定められていること、同規則には、右二七条以外に規則変更について定めた規則はないこと、被告宮城県知事は、昭和五〇年一二月二日認証決定した旨を、満蔵寺に対して通知したこと、以上が認められる。また、右事実より、被告宮城県知事が、満蔵寺の右申請を宗教法人法二七条所定の方式を具備した適式なものであると認めて受理したこと、右認証申請書及び同申請書添付の前記各書類を検討のうえ同法二八条一号及び二号の各要件を具備した適法な申請であると認めて認証したことがそれぞれ推認できる。

ところで、宗教法人の規則変更の認証について、所轄行政庁たる県知事としては、申請の際に宗教法人法二七条所定の要件を満たす適式な書類が提出されており、それらによつて、右申請が同法二八条の要件に適合していると判断できるときには、原則として、それ以上の実質審査を経ないで当該申請に対して認証を行うことができ、また、そのようにすべきであると解されることは、右各法条の規定から明らかである。

しかし、他方、宗教法人の規則及びその変更についての県知事の認証は、当該規則又はその変更の効力を補充し完成させるための行為であつて、規則及びその変更を離れた独立の創設的効力を有しない行為、すなわちいわゆる認可的行為であると解するのを相当とするから、規則又はその変更自体が無効なときは、県知事の認証によつて当該規則又はその変更が有効となるものではなく、県知事の認証は効力を生じないものと解せざるを得ない。従つて本件において、宮城県知事が、前記認定のように、本件規則変更の認証申請を受理し書類審査のうえ認証処分をしたことの手続自体に過誤がないからといつて、直ちに本件認証が無効でないものということはできない。よつて右の点に関する被告宮城県知事の主張は失当である。

2  責任役員代務者の選任について

(一)  昭和四六年に旧々満蔵寺規則を旧満蔵寺規則に変更したころの責任役員は運廣、廣光、佐藤惣太郎であつたこと、右規則変更により責任役員及び総代の定数がいずれも三名から五名になつたこと、佐藤惣太郎は昭和四九年四月七日死亡したこと、旧規則に替つてから責任役員の選任は行われなかつたこと、運廣は、同年五月一日、渡辺忠太郎、太田幸八、高橋勝治を責任役員の代務者に選任したこと、昭和五〇年六月、少なくとも運廣及び右三名の代務者によつて、旧規則より新規則への変更を責任役員会議で決議したこと、以上は原告らと被告宮城県知事との間に争いのない事実である。

また、<証拠略>によれば、旧満蔵寺規則は、代務者を置くべき場合として、代表役員又は責任役員が死亡、辞任、任期満了その他の事由によつて欠けた場合において、すみやかに後任者を選ぶことができないとき(一〇条一項)及び代表役員又は責任役員が病気、旅行その他の事由によつて三月以上その職務を行うことができないとき(同条二項)の二つの場合を規定しており、代表役員以外の責任役員の代務者の選任方法については、代表役員又はその代務者が、法類、総代その他のもののうちから選定し、宗派の代表役員が任命する(一一条三項)旨規定していることが認められる。

(二)  そこで、前記昭和四九年五月一日の代務者三名の選任に至つた経緯について検討すると、<証拠略>によれば、以下の事実が認められる。すなわち、

運廣は、昭和一六年、宗派の総本山長谷寺より当時無住職寺として荒廃していた満蔵寺へ住職として入山して同寺を再興し、昭和四〇年一一月には本堂、庫裡等を建立し、昭和四四年には子の廣光を同寺の責任役員に就任させるなどしてきたものであるが、その間の同寺の運営、とくに右本堂等建立の際の檀徒からの資金集めの方法などに関し、檀徒らの中に、同住職が専横であるとの不満を持つ者が現われていたところ、昭和四六年四月に施行された仙台市議会議員選挙の直後に、同選挙に出馬して落選した廣光に対する選挙運動の方法等に関する運廣及び廣光の発言を契機として、運廣らに対する檀徒らの右不満が表面化し、同年五月三日、檀徒四三名が集まり、原告甲山を委員長として満蔵寺檀徒会(以下「檀徒会」という。)を結成し、檀徒の意思を寺の運営に反映させること等を求める依頼書を運廣らに提出した。これに対し、運廣は、責任役員会議を開いて、右檀徒会の結成や行動に重要な役割を果していると判断した原告太田市蔵に対し、その檀徒資格を解除する旨の決議を行い、また運廣を支持する檀徒らは満蔵寺護持会(以下「護持会」という。)を結成してこれに対抗したため、檀徒会所属の檀徒らは、右太田市蔵に対する資格解除の撤回、満蔵寺の運営の民主化等を要求して檀家から署名を集め、あるいは宗派に要望書を提出し、太田市蔵は別に檀徒資格解除処分無効確認を求めて仙台地方裁判所に提訴するなどして紛争が拡大した(<証拠略>中の護持会の結成に関する右事実に反する部分は、その他の証拠に照らし、信用できない。)。その後宗派の仲介により、双方が話し合つた結果、紛争は一応鎮静し、檀徒資格解除は撤回、訴も取下げになつた外、それまで満蔵寺規則により、ともに三名と定められていた責任役員、総代の各定員をいずれも五名と改める規則変更をし、同年一〇月二三日、宮城県知事の認証を受けた(右規則変更及び認証の事実については原告らと被告宮城県知事との間に争いがない。)。右規則変更当時の責任役員は、運廣、廣光及び佐藤惣太郎であつたが、右規則変更により二名の責任役員が欠員となつたため、総代の欠員分も併せ補充する目的で同年一一月一四日、檀徒総会が開催され、檀徒会側から責任役員を推せんするための総代候補五名の提示がなされたが、運廣は、代表役員の役員選定権等を盾に、右候補者からの選定を拒否して閉会を宣言した。その後も、両者間に妥協がなく、檀徒会側は、昭和四七年八月三日、宗派に対し、運廣に対し住職の辞任を勧告すること等を求める調停を申し立てさらに昭和四八年に入つてからは、運廣及び廣光に対して懲戒を求める旨申し立てた結果、昭和四八年三月に、宗派より双方に対し、調停案が示された。右調停案は、「(1)檀徒総代の選出については、檀徒会側より三名、護持会側より二名を推せんし、これを住職が選任する。(2)責任役員の選出については、檀徒会側より二名、護持会側より一名、法類その他の者のうちから住職が選定した者一名を、住職が宗派代表役員に任命申請の手続を行うものとする。但し、今回法類中本郷廣光は責任役員から外される。(3)法類又はその他の者に適任者の無い場合には、本派教師について、宗務所の推挙指命した者をもつて替えることができる。(4)本郷父子に対する懲戒申立に対しては、入念に調査のうえ、申告されるべきものとする。」旨の内容であつたが、護持会側は同年三月二八日、異議なくこれを承諾し、檀徒会側も間もなくこれを承諾したので、宗派調停委員長は同年七月二〇日、宗派規則に基づいて、同案を宗派管長に開申し、管長はこれを全部了承し、宗派宗務総長は、右調停を執行すべく、同年一〇月一五日、右調停に基づいて満蔵寺の運営の正常化を計るよう要望することを決定した旨、檀徒会側に通告した。また、運廣に対する懲戒の申立てについては、本来は、宗派規程により、住職罷免とすべきであるが、同年が同宗派宗祖降誕千三百年慶讃の祝年であるため、懲戒区分を一級減じ、僧階降級に処することとし、その旨、当事者に通告した。檀徒会及び護持会は、昭和四九年二月二〇日、満蔵寺本堂において、双方から三名ずつが出席して総代と責任役員の選出方法について話し合つた結果、総代及び責任役員の候補として、檀徒会側から五名、護持会側から三名をそれぞれ出し、右計八名の互選によつて総代と責任役員を決め、檀徒総会に諮るということになつた。右話し合いに基づき、檀徒会側は、同月二一日、運廣に対し、責任役員ないし総代の候補として、原告甲山菊治、同菊地三男、同山田幸男、同佐藤重雄、訴外庄子惣兵衛の五名を推せんする旨告げたところ、運廣は、これに対し、同年三月四日、右五名はこれまでの紛争における檀徒会側の幹部であるという理由により承認できないので、改めて選出されたい旨、甲山に通知してきた。甲山は同月九日、右通知に対し、改めて選出する意思はない旨及び運廣こそ代表役員に不適であるから代表役員の代務者が選任されるべきである旨書面をもつて応酬した。その後間もない同年四月七日、当時責任役員であつた佐藤惣太郎が死亡し、運廣は、これを機に、渡辺忠太郎、太田幸八、高橋勝治を責任役員の代務者に選定し、同年五月一日、右三名につき、宗派の任命を受けた。

以上の事実が認められる。

(三)  以上の(一)及び(二)の事実によると、本件代務者三名の選任当時には、責任役員の定数が五名であるにも拘わらず、少なくとも三名の欠員があつて、事務の議決(定数の過半数による)が不可能な状態にあつたものと認められるので、満蔵寺規則の定める代務者を置くべき場合の要件の一たる「責任役員が死亡……その他の事由によつて欠けた場合」に該るものと解される。

そこで、さらに他の要件である「すみやかに後任者を選ぶことができないとき」に該るか否かにつき検討する。

前記(一)及び(二)の事実によれば、宗派による前記調停の趣旨は、満蔵寺における紛争を早期に解決し、同寺の運営の正常化を図るため、一方においてこれまで最も難航していた役員の選任につき、住職兼代表役員たる運廣及びこれを支援する護持会側と檀徒会側とがいずれも役員及び寺院運営を独占することのないように、檀徒会側と住職・護持会側との双方の総代、責任役員に占める人数を、代表役員たる運廣をも含めればほぼ均衡の保てるような割合になるように決め、さらに外に、中立的な立場を期待し得る法類等を責任役員に加えることとし、しかも、役員の選任方法については、右決められた人数に応じて各会で推せんした各役員候補を、代表役員たる住職が総代に選任し、あるいは責任役員に任命申請することとし、他方において、本件紛争については運廣に責任を取らせて同人を懲戒処分に付するが、その処分の内容については寛大なものとするというものであつたこと、右調停の当事者双方は右の趣旨を了解して右調停を異議なく受諾したものであることがそれぞれ推認できる。これによれば、右調停は、檀徒会及び護持会のそれぞれ推せんした責任役員の候補について代表役員たる住職がこれを宗派に任命申請しなければならないことを定めたものであることは明らかである。

被告宮城県知事は、被告満蔵寺の主張事実を利益に援用して、紛争当事者の幹部は役員に就任できないというのが調停の前提条件であり宗派の意向も同様であつた旨主張し、<証拠略>には、昭和四八年四月及び一〇月、翌四九年三月に、当時宗派総務部長であつた浅井堅教が運廣及び護持会の者に右のような意向を告げたことを示唆するかのような部分が見られないではないところ、<証拠略>によれば、たしかに右調停の成立前には、浅井堅教が、檀徒会及び護持会の双方にそれぞれ従来の幹部は第一線からしりぞいて役員は新しい者になつてもらうようにしてはどうかと勧めたことがあり、これに対して檀徒会側は応じてもよいとの意向を示したが、護持会側がこれを頑なに拒否したため話し合いが頓挫したという経緯があつたことが認められるけれども、この認定事実に照らしても<証拠略>は採用しがたく、これらの証拠から調停成立後に、浅井堅教が、調停の実施にあたつて、なおも、紛争当事者の幹部は役員候補から排斥されなければならないという意味の発言をしたとは認めることができない。他にも、紛争当事者の幹部は役員に就任できないとの前提条件が存したとの前記主張事実を認めるに足りる的確な証拠はない。

また、前記認定のような経緯のもとに住職たる運廣を含めた当事者により異議なく承諾されて調停が成立したものであることからすれば、右成立にかかる調停が、満蔵寺規則の定めとは一部異なり、責任役員の人選に関し住職に裁量権を与えない内容のものとなつているからといつて、直ちに規則に抵触する無効のものであるというのは相当でない。

そうすると、運廣としては、前記認定のように檀徒会側が昭和四九年二月二一日責任役員ないし総代の候補として五名を推せんしてきたのであるから、同年同月二〇日の檀徒会・護持会の前示合意に基づく双方からの候補者計八名(右五名を含む)による互選の結果に従つて責任役員三名及び総代五名を選定及び選任するか、そうでないとしても、自らが、檀徒会の分として右推せんにかかる五名のうち任意の二名を責任役員に選定しその余の三名を総代に選任するか、すべきであつたのであり、また、そのようにすることについて支障となるべき正当な事由があつたとは何ら認められないのである。

してみると、運廣が責任役員代務者三名を選定しこれが宗派によつて任命された当時、代務者選任の要件たる「すみやかに後任者を選ぶことができないとき」に該当する情況はなかつたことが明らかであるから、本件代務者の選任は無効なものといわなければならない。

3  以上によれば、旧満蔵寺規則により責任役員会議の議決は定数(五名)の過半数によることとされているところ、本件規則変更の決議に参加した二名の責任役員及び三名の責任役員代務者のうち、右責任役員代務者三名についてはその選任が無効であつて代務者としての適法な資格を有しない者であるから、これらの者の参加による本件規則変更の決議も違法かつ無効なものであるといわなければならない。

そして、規則変更行為に重大な瑕疵があつて無効である場合には、これに対する県知事の認証も前記三1で述べたように無効となるものと解すべきであるから、宮城県知事のした本件認証もまた無効というべきであり、原告らの被告宮城県知事に対する本訴請求は理由がある。

四  よつて、原告らの被告宮城県知事に対する請求はこれを認容し、被告満蔵寺に対する訴えはこれを却下することとし、訴訟費用の負担につき、行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条、九三条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 櫻井敏雄 八木正一 富岡英次)

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